背番号「51」の想いが乗った打球は、力強くレフトスタンドへ消えていった。
山口航輝。
8月5日、ZOZOマリンの空気が大きく揺れた。

昨年4月以来の本塁打。
長いトンネルを抜け、ようやく掴んだ価値ある1発。
それはただの3ランではない。
孤独と焦燥、葛藤にまみれた26年シーズンへの宣誓でもあった。

二軍に落ちても腐らなかった。
「今日の打席にすべてを賭ける」
誰も知らないところで、バットを握り続けた。
でも心は折れそうになる。
「自分を応援してくれる人…いるんやろうか?」
そんな不安すらよぎったという。

しかし打席にコールが響けば、スタンドから大歓声。
山口の存在を、誰も忘れてはいなかった。
その声援が、バットに火をつけた。

狙い球はチェンジアップ。
迷いはなかった。
豪快なフルスイング。
軌道は大きく弧を描き、誰よりも高く飛んだ。
それは──山口の再出発を告げる花火だった。

さらにこの日は、生まれたばかりの我が子が初めて見守る前での本塁打。
ヒーローインタビュー後、嬉しそうに渡したホームランボールは、
家族への恩返しの証でもあった。

翌日の試合では連日の本塁打。
8月20〜21日には4打席連続本塁打という離れ業。
遅れてきた夏の主役は、ようやくZOZOで輝きを放った。

「やるか、やられるか」
その覚悟が、長距離砲を覚醒させる。

支えてくれた人のために
応援してくれる人のために
家族のために
そして──自分自身のために。

山口航輝という選手は、まだまだこれから強くなる。
26年シーズン、ZOZOの空に放つアーチはもっと増えるはずだ。